「大正~昭和初期のマンドリン楽譜を弾いてみた」シリーズ、最近は、サイレント映画につける伴奏のための楽譜を弾いています。
今回演奏したのは、この曲。(25)The Secret of The Sea
使った楽譜はこれ
映畫音樂研究會編 NO.3
「シンフオニー ヴァイオリン マンドリン 樂譜 現代映畫伴奏曲集 前編」
【裏表紙下部のの奥付】
昭和二年五月一日印刷
昭和二年五月三日發行
定價 金五拾錢
編者 映畫音樂研究會
印刷發行者 草野 茂
東京市牛込區西五軒町三十四番地
發行所 シンフオニー樂譜出版社
電話牛込六九〇九番
振替東京六九一二七番
(25)The Secret of The Sea ザー セクレツト オブ ザー シヱー
Zamecnik.
前の持ち主が書いたと思われる、チェックマークがあります。
実際に演奏したのかな?
ちょっと待て、「ザー セクレツト オブ ザー シヱー」って!(笑)
英語の音声をカタカナで表記するなら「ザ・シークレット・オブ・ザ・シー」でしょう。
ヱって何さ!?ミスターイヤミが出てきそうだよ。
昭和初期の英語ヒアリングってこういう感じ!?促音「ッ」を大きく書くのは、まあわかるけどさ。
曲は漫画のキャラとは全く関係ありません。8分の6拍子で、バルカローレ(舟歌)な曲調です。
解説には、
「此の曲は水邊(みずべ)或は湖水等を背景としたる靜かなる氣分のラブシーン、又は散策等の場面に伴奏するを可とす。」
と書いてありました。
作曲は、あのザメクニックさん
「The Secret of The Sea」は、アメリカで活躍した作曲家、John Stepan Zamecnik(1872-1953)の曲です。
ザメクニックさんといえば、Sam Fox社から「Sam Fox MOVING PICTURE MUSIC」、つまりサイレント映画のピアノ伴奏曲集を4冊も出している人です。
それにしても、100年くらい前の楽譜を弾くようになってから、ずいぶんザメクニックさんの名前を見るようになったなあ。
マンドリン界におけるアマデイさんのように、ザメクニックさんは、わたしの中では超有名人!
原曲の楽譜
この曲の楽譜は、1923年に出版された「Sam Fox Library Orchestra Folio Volume 6」に掲載されています。
この曲集の表紙には、「A collection of select compositions for hotel, cafe, theatre, moving picture and concert orchestras」と書いてあります。ホテル、カフェ、劇場、映画、コンサートオーケストラ向けの曲を掲載した曲集なんですね。
そしてこの曲集の「The Secret of The Sea」という題名の下には、「From the Piano Suite “LOVE SONNETS”」と書いてあります。
へえ~「愛のソネット」という、ザメクニックさんのピアノ組曲があるんですね。他の楽章はどんな曲があるのでしょうね?
演奏音源
SPレコードや最近の演奏を探してみましたが、見つかりませんでした。
ピアノ組曲としても、今は演奏されないのでしょうか?
その代わり、Fiona Hickie's Sheet Music PreviewというYouTubeチャンネルで、編曲されたスコアとMIDI演奏を視聴できました。
The Secret of the Sea
(木管四重奏版)
The Secrets of the Sea: String Quartet
(弦楽四重奏版)
この曲についていうと、当時の映画音楽に貢献した多作なザメクニックさんだから、こうして楽譜や動画がみつかるんでしょうね。それでも、今の時代では演奏されることがほとんどないという曲が、数多くあります。
明治時代から日本に入ってきた“洋楽”を、映画伴奏音楽という方面からも受容してきたということは、興味深いですね。
そして、どうして「現代映畫伴奏曲集」は、日本人作曲家が作ったオリジナル曲が収められなかったのでしょう?なぜこの曲集が作られたのかというのも、知りたいです。
YouTube「ikekomandolin」のチャンネルでは、「大正~昭和初期のマンドリン楽譜を弾いてみた」という再生リストも作っています。古書店から購入した、古いマンドリン楽譜を弾いています。どうぞごらんください♪
0 件のコメント:
コメントを投稿